【インタビュー】「風景、まちと旅行の密度を上げていきたい」―地図とまちと風景の接点(後編)

「まち」に興味のある人にお話をうかがうシリーズ、第3弾の後半は「まち」を見る視点と「エモい風景」について深くお話を伺っていきたいと思います。

大学で地理学を学んで「まち」の見方を知った

鳴海:前回冒頭の話に戻りますが、大学でまちの見方を知ったというのは、具体的にどのような感じでしょうか。

アリス川:前回ちらりとお話しましたが、授業でフィールドワークにいって見方が変わりました。大学1年生の10月に東毛の館林と大泉と太田へ行きまして。それは大学院生や教授が企画する巡検についていくという実習授業でした。先に挙げた3つのまちは全然毛色が違って見えましたね。館林は城下町だったけれど今は見る影もない。太田はスバル(富士重工業)の企業城下町、大泉がそこへの出稼ぎ労働者でブラジリアンタウンと化していました。こうして、まち毎のはっきりとした違いを1日で見たので、結構衝撃的でした。それまではまちあるきもしていましたが、まちの違いを考えながら、意識しながら歩くということはしてきませんでした。

鳴海:いい風景とかいい街並みとかは写真に撮ってきただけど、どうしてこの風景が形成されたかとか背景まで踏み込んでなかったという感じですか?

アリス川:そういう感じです。まちのことについて大学院生が資料をくれたり、話をしてくれたりして、面白かったです。そのあとに大阪・神戸の巡検もあって、別のゼミだったけれど参加しました。観光したことはあるけど、ちゃんとまちはみていないと思いましたね。関西のまちも見方を変えると面白くて。それからどんどんとまちを見ることにハマっていきました。

鳴海:なるほど。大学で地理を専攻したことが興味の対象と観方を変えたということですね。アリス川さんがまちを見る中で注目しているところはどこですか?

アリス川:まちをみていくなかで、自分が目を付けたのは商店街でした。商店街はまちのなかで人が集まる場所ですが、それぞれで活気が違いますし、見ているだけでも面白いですね。特にアーケードを見るのが好きです。

鳴海:アーケードは画になりますよね。

 
宇都宮・オリオン通り

宇都宮市・オリオン通り (撮影:鳴海行人・2017年)

 

アリス川:そうですね。個人的にアーケードの魅力は3つあると思っています。まずは様々な看板が軒を連ねる様子や屋根の構造といった景観的な魅力です。次にアーケードはまちの現状が一目でわかる指標になっていることですね。例えばシャッター街なら、このまちは元気がないのかもな、とか思います。そして最後にコレクションとしての魅力です。アーケードでも別府の竹瓦小路のように産業遺産に指定されているものや飲み屋街など本当に地域によってさまざまで、しかも偏りはあれども全国にあります。巡っていてとても楽しいですね。また、賑わいのある商店街とそうでないところはどうして違うのか考えるのが好きです。

鳴海:アーケードは様々な切り口から見れるから面白いですよね。コレクション的な要素というのも頷ける気がします。

アリス川:そうですね。アーケードの他に城もよく回るのですけど、そういう意味では城と同じかもしれません。

鳴海:城はいつから回られています?

アリス川:城は一人旅をし始めた高校の頃からですね。天守閣から見える景色が好きです。

鳴海:そういう画になるところを中心に回られているという感じですね。話は戻りますが、商店街で一番いいと思ったところはどこでしょう?

アリス川:好きなのは松山の銀天街ですね。松山は個人的にすごく好きなまちで。商業と繁華街と観光地が狭いところに集約されているんです。コンパクトなのも好きですし、景観的にも路面電車が走っていて、山もあれば海もあります。松山城から見た景色が天守閣から見える景色としては一番好きですね。あとはリフトから見える景色がお勧めです。

 
松山銀天街

松山市の中心部にある松山銀天街 (アリス川さんより提供)

 

鳴海:松山城は行ったことがないですね。今度ちゃんと登ってみることにします。

エモい風景を探して

鳴海:アリス川さんの写真をTwitterで拝見させていてだいて、とても上手いなぁと感心しています。そこで、どこで覚えたのだろうと気になっていまして。写真撮るのはいつくらいからはじめましたか?

アリス川:高校くらいからやってますね。カメラは高校の時は親と共用のコンパクトデジタルカメラで。高校でカメラに詳しい友人が何人かいて、一緒に出掛ける機会がありまして。写真の見せ合いをもやっていました。その中で上手いなと思う撮り方や構図を見様見まねでやっていました。今でも人の構図を参考にして、上手く撮りたいと思っています。同じ場所、同じ構図でも他人の方がうまく撮れていることあって、悔しさを覚えるときもありますね。

鳴海:なるほど。切磋琢磨する環境があったのですね。ちなみに、写真を撮る上でどのようなものを中心に追いかけていますか?

アリス川:最近は生活の風景・ワンシーンを切り取りたいと思っています。まちを知るようになってそういう欲求が湧いてきました。写真を始めた当初はテンプレみたいなカットを撮れば満足していたのですが、最近は街の生きている姿、動いている姿を撮りたいと思っています。

鳴海:そうすると、瞬間を切り取る感じですか?

アリス川:そういったものに出会えたらいいなと思います。まずは、景観のいいところがあるまちというのは重視していますね。行先とかを決めて、いろいろ調べていい景観のところがあったらここに行こうみたいな感じです。

 
尾道市街

尾道市街 (アリス川さんより提供)

 

鳴海:旅の行先を決めるポイントってなんでしょうか?

アリス川:行ってないところに行くという感じですね。最近ですと、Twitterで地名や写真を見て決めています。やはり、いい景色の写真に弱いですね。四国ですと、街並みがきれいな内子や、海の近くに駅がある下灘に行きました。

鳴海:ちなみに、今まで一番印象に残った場所はどこでしょうか?

アリス川:横須賀の汐入や安針塚のあたり、あとは長崎や尾道のような坂のあるまちですね。なんでこんな住みにくいところに家が密集しているのだろうと思うし、景色としても風光明媚だと思います。山と海、両方あって人が住んでいるぜいたくさがありますね。

鳴海:確かにぜいたくな気がします。私も尾道は結構好きですね。これから行ってみたいまちはありますか?

 
長崎市街

長崎市街(アリス川さんより提供)

 
横須賀市汐入地区

横須賀市の汐入地区(アリス川さんより提供)

 

アリス川:山陰、特に松江・出雲ですね。自分としては山陰の東の端から西の端まで一気に行きたいなって思います。敦賀、舞鶴、宮津、城崎、鳥取、米子、松江、萩、津和野って一気に回りたいですね。

鳴海:山陰はいい風景のところが多いですよ。今後も風景を探して車や電車で旅行される感じでしょうか。

アリス川:そうですね。エモい風景、エモい景観を求めつつ、まちもしっかり見ていきたいです。なるべく旅行の密度を上げていきたいとも思っています。以前は観光旅行でしたが、最近はまちを見る方に旅行のスタイルもシフトしていますし。この間は京都に行ったときは中心街ばかり見ていました(笑)。そうそう、エモい風景といえば、離島がいいですね。最近は離島からフェリーにハマりました。離島で言えば天草にいってみたいですね。本渡と牛深……まちのがあまりないのですよね。

 
瀬戸内海の島、家島

瀬戸内海にある家島。姫路市に属する (アリス川さんより提供)

 

鳴海:こうだんだんと見る要素が増えていきますね。

アリス川:そうですね。旅行には今まで得てきた様々な要素がどんどん集約していますね。その結果いろいろ見たくなっています。観光もしたいし、街も見たいです。とにかく極めたい旅行になっています。

鳴海:今後もまちと、エモい風景の写真を期待しております。本日はどうもありがとうございました。

今回もまちの見方について楽しいお話を伺うことができました。
特に地図に関するお話や、アーケードについてのお話は、とても面白かったです。

さて、matinoteでは、今後もこうしたインタビューを企画しております。メンバーに会って話してみたい、この人と話してほしいなどございましたら、お気軽にSNSやお問い合わせフォームからどうぞ。お待ちしております。

【今回利用した喫茶店】

イリヤプラスカフェ内装

 

イリヤプラスカフェ(入谷)
 地下鉄日比谷線、入谷駅近くの路地にあるカフェです。古民家兼倉庫を改装しており、店内には本や雑誌、アンティークな調度品があり、落ち着いた雰囲気となっています。パンケーキが自慢のお店で、おいしいスイーツと共にゆったりとした時間が過ごせます。

 

イリヤプラスカフェ外観

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鳴海 行人
matinote仕掛人・ライター・マネージャー(編集長) 90年生まれのまち探訪家。 地域を俯瞰的に見つつ、歴史を掘り下げて現在の姿への系譜を探りながら、まちを観察をしています。地誌・地方都市・総合交通体系・ロードサイド・観光・空間デザインなど様々な視点を駆使し、まちを読み解くことがひとつの楽しみです。