【インタビュー】「どんなまちをみても「こんな町の形もあるのだなぁ」と評価するようになりました」まちづくりゲームをして見える現実のまちのこと―まちづくりゲーム対談(後編)

 魅力的な世界が体験できる、まちづくりゲーム。しかし、私(鳴海)は「所詮ゲームで現実のまちとは違うし、なぜ面白いのか。ひたすらゲームだけやって、実際のまちを見ないのではないか」と思いました。
 そこで、今回はまちづくりゲームと現実のまちとのつながりや現実のまちの見方をお伺いしてきました。すると、まちづくりゲーム大好きな2人の口から出たのは「まちづくりゲームをするからこそ、まちを見に行く」という意外なものでした。

対談者

わくせん:レトロ団地とレトロ自販機をこよなく愛し各地を飛び回るシムシティプレーヤー。

夕霧もや:各地の電車混雑と各地のまちなみを眺めて回るA列車で行こうプレイヤー。

鳴海行人:まちづくりゲームはすぐに飽きてしまうmatinote編集長。

ゲームで再現してしまうリアルの風景

鳴海:では、今回はまちづくりゲームと実際のまちのつながりについてお話ししていただきたいと思います。

夕霧:まちづくりゲームをやっていくとまずありがちなのが「行った先を作りたくなる」という現象ですね。

わくせん:私もそうです。行った地域で印象に残った景色を写真に撮ると同時に、何らかの形で再現したいと思うんですよね。自分の見知った街並みを作ってみることもあれば、旅行先で訪れた街並みを作ってみるということもあります。

夕霧:そうですね。丸々再現するのは難しいので、要素だけ再現するということはよくありました。以前、関西で高速道路に乗る一般路線バス(神姫バスの恵比寿快速、京阪バスの山科急行)にやたらと乗ってきたときがあって、帰ってきたら案の定ゲームの中でそれを作り始めました。

わくせん:要素を盛り込むという意味で言えば、絶対みんな1度は新御堂筋を再現していると思うのですよね(笑) 新御堂筋は大阪を象徴する風景だと思います。

 
道路に挟まれて鉄道が走る大阪・新御堂筋

道路に挟まれて鉄道が走る大阪・新御堂筋 (撮影:わくせん・2017年)

 
わくせん氏が新御堂筋をモチーフにつくったまちの様子

わくせん氏が新御堂筋をモチーフにcities:skylinesでつくったまちの様子 ©Colossal Order/Paradox Interactive

 

夕霧:作りますよねぇ(笑) でも、全体として全部作るのではなくて「それっぽさ」を取り入れるのですよね。

わくせん:そうそう「それっぽさ」っていうのはキーフレーズかもしれません。完全再現だと途中で心が折れます。むしろ完全再現できる人はすごいと思います。あと、作るときにテーマを設定しませんか。

夕霧:そうですね。テーマを設定して、それっぽいのを作って行く感じです。例えば、以前スイスっぽい鉄道っていうのを作りました。スイスってやたらと列車同士の接続がいい。ネッツグラーフィーって言うらしいですが、これが格好良くて取り入れたダイヤを作りました。

鳴海:スイスの鉄道の話は交通新聞社新書で本になっていますね。

わくせん:そうすると、川沿いの路線はライン川をイメージ……?

 
ライン川沿いの鉄道……ではなく飯田線をモチーフにしたマップ

ライン川沿いの鉄道……ではなく飯田線をモチーフにした「A列車で行こう 9」のまち(夕霧氏作成)  ©ARTDINK

 

夕霧:いや、これは飯田線ですね……。

わくせん:ああ、大テーマがありつつも小テーマでその時自分が好きなものを混ぜてしまうみたいなことがあります。マクロなこだわりとミクロのこだわりを入れていく感じです。

夕霧:そういえば、浜松に行った後に浜松の地名で作りたくなってマップを作りました。遠鉄百貨店が駅前にあります。でも、ところどころにツッコミどころが……。

鳴海:アクトタワーとバスターミナルと百貨店……「それっぽさ」が詰め込まれていますね。

夕霧:ちなみに車両は遠州鉄道の車両がないからスイスので代用しています(笑)

鳴海:そしてこれは、あれ、東静岡?

 
浜松駅をモチーフにしたまち

浜松駅をモチーフにした「cities:skylines」のまち(夕霧氏作成)  ©Colossal Order/Paradox Interactive

 
浜松をモチーフにしたまちには隣接して東静岡のような長い歩道橋が架かるまちが……。

浜松をモチーフにしたまちには隣接して東静岡のような長い歩道橋が架かるまちが……。(夕霧氏がcities:skylinesで作成)  ©Colossal Order/Paradox Interactive

 

夕霧:そうですね。なんか置きたくなったのでしょうね。

わくせん:こういう風に急に小テーマが設定されることはよくありますね。

鳴海:でもでも!浜松にそんなペデストリアンデッキはないでしょう。それは1970年代に浜松市都市部が作った計画にあった奴じゃないですか。

夕霧:いやぁなんかいつの間にかできていました(笑)

 
浜松駅をモチーフにしたまちのはずなのに、立派なペデストリアンが!ちなみに、1970年代の都市計画に存在していました。

浜松駅をモチーフにしたまちのはずなのに、立派なペデストリアンが!ちなみに、1970年代の都市計画に存在していました。 (夕霧氏がcities:skylinesで作成)  ©Colossal Order/Paradox Interactive

 

都市論やうまくいっていないまちをゲームで再現する

わくせん:そうそう、実現しなかった理想の都市計画というのをゲームの上で実践することがあります。例えば「300万人の現代都市」(ル・コルビジェ)、「近隣住区論」(クラレンス・ペリー)、「田園都市論」(ハワード)を再現しました。

鳴海:どうでした?

わくせん:AIと噛み合いが良くて、理想の街になりました。都市論自体、みんな合理的な行動をする市民を前提に作っているところがあるので、AIと相性がいいのですよね。ちゃんと乗り換え回数が少ないように動いてくれたりします。大学で勉強したことがこんなところで楽しめるのはいいですね。

夕霧:あとは、大変な問題を抱えているまちを見ると、その大変そうな状況を再現したいと思うことがあります。自分で意図的に大変さを作った上で、その制約をどうかわすか考えるパズルゲーム的発想です。一方で理想的にまちが回っている姿も見たいとも思います。

鳴海:お2人とも動的にうまくいっているものが見たいのかもしれないですね。ゲームでまちができた後に結果が見えますし、思った通りに行かないところもある。そこまで検証するのも楽しいのかもしれません。

まちづくりゲームをしたくなる理由

鳴海:まちづくりゲームの面白さと広がりをお伺いしてきたのですが、そこまで入れ込む理由をお伺いしていませんでした。

わくせん:私の場合、自分の見た風景を作りたいというところに集約されますね。夢の中にしかないような都市を作ることがありますが、最大のモチベーションは見たことある景色を自分の手で作りたいって感じですね。完成するまでを自分の手でやることで、このまちを作り上げた人の気持ちを追体験します。特にニュータウンだと顕著ですが、様々な人の想いや熱意とかがあってまちができるわけで、ほんの欠片でもそういった人の想いが追体験できるのは楽しいです。私は歴史好きな部分もあるので、昔のまちやその理想に想いを馳せることもあれば、発展した国土を作ろうと思う人たちの熱意を自分の中で再現することもあります。いまは何もないけどここには何十万人も住むんだという計画のロマンを追体験することは現実にできないので、ゲームの中でやるという感じですね。

 
ニュータウン開発にはロマンのようなものがあるような気がします

ニュータウン開発にはロマンのようなものがあるような気がします (撮影:鳴海行人・2017年)

 

鳴海:なるほど。夕霧さんはどうですか?

夕霧:いまのわくせんさんの話を聞いていて、そういう考え方もあるのかと思いました。自分の場合はモチベーションをつかみかねているところがありますね。うまく言えないですけれど、箱庭を作っていじって遊ぶのが好きというところでしょうか。まちというものを自分の手に届くようにしたいという気持ちがあるのかもしれません。

鳴海:え、でも箱庭といっても実際はゲーム内でも上手くまちが動いているわけではないじゃないですか。

夕霧:それをコントロールするのが楽しいのです。

わくせん:ままならなさが出てくるのも楽しいですね。何でもかんでも思い通りにまちが出来上がるというのもそれはそれで面白くないと思います。例えば、この道路はとても渋滞している!というのを見つけて、資金を使ってバイパス道路を作っても、結局渋滞は解決しないとか(笑)

夕霧:適度にてこずり、解決していくのが面白いんですよね。

わくせん:問題を起こすのも自分だし、解決するのも自分なのですが、達成感みたいなのはありますね。

鳴海:なるほど。達成感もあるのですね。

 
ゲームの中のまちで渋滞する道路

ゲームの中のまちで渋滞する道路 (わくせん氏がcities:skylinesで作成)  ©Colossal Order/Paradox Interactive

 

まちづくりゲームをしたからこそできる、現実のまちの見方

鳴海:最後に「現実のまち」にフォーカスを当てた話をしたいと思います。少し話は戻りますが、まちづくりゲームをやっていく中で現実のまちの要素を入れていくという話がありました。そうすると、実際のまちを見るときに見方や思うことというのはまちづくりゲームに触れることで変わりましたか?

わくせん:ゲームである以上、表現の限界は当然存在するわけです。そこを頭の中で補うとか見立てとかするわけですが、材料は現実の町の風景の中から引っ張り出されてきます。一方で実際の街並みをゲームっぽい街並みだと思うこともあります。こうして、ゲームの中では自分の想像力の範囲でしかまちを作れないので、面白いまちを作りたいという動機でまちをみることがありますね。それから、ゲーム内で「この地形をどう開発しよう?」と思った時に現実世界を見ると「そうやって開発したのか!」と知って取り入れることもありますね。ゲームで街並みを見ていて楽しいなと思うようになったことで、現実の世界でも街並みを見て楽しくなるようになったと思います。特に私はゲームからまちを見るようになったので、多分シムシティと出会っていなかったらまちなみに興味を持つことはなかったでしょうね。

夕霧:私はゲームで再現するためにまちを見ているというところが多分にあります。自分が旅行中に感銘を受けたり、「面白い」と思ったりした部分を再現しますね。ゲームで風景を作るために旅行に行っているという部分もあると思います。

鳴海:そうすると、お2人とも見てゲームに反映できそうで楽しそうなところを探して旅行にいくのですか?

夕霧:いいえ、私はあまり調べないタイプですね。その場で調べていくことが多いです。

わくせん:私は元々珍スポットやB級スポット大好きな人なのでそういったものを調べていきます。でもなんということない風景、例えば道路に沿って延々と戸建て住宅が並んでいるような風景も好きです。「シムシティ」で再現したくなりますね。

 
開発途上の新興住宅地

開発途上の新興住宅地 (撮影:鳴海行人・2016年)

 

鳴海:もはや何を見ても面白くなるのかもしれない……。

わくせん:そうですね。どんなまちをみても「こんな町の形もあるのだなぁ」と評価するようになりました。たまに渋滞を市長権限でなんとかしたくなっちゃう気持ちにはなりますが(笑)

鳴海:全体的に、肯定的に評価するのはいいですね。

夕霧:確かに私もまちを否定的には見ることはないです。「ああ、こういうパターンのまちなのか」と思うくらいですね。マクロ的にまちを見たときに肯定的評価から入り、パターンややり方を知って、要素としてゲームに取り入れていく感じです。

わくせん:あとはゲームであってもまちづくりは大変なので、現実でも大変なのだろうなと寛容になれます。ある日自宅が突然取り壊されても住民は文句を言わず、市長の一存で計画立案・実行ができる「シムシティ」ですら都市開発が大変です。それなのに現実の都市開発なんて面倒だと思います。だから挫折するのも仕方ないよねって思えるようになりました。それから、実際のまちでもうまくいっていないところを見るとなんだか安心します。「ここを考えた人も結果がこうなると思って作っていなかったのだろうな」と思うことも多いですね。

鳴海:ゲームを通じて学ぶ、都市開発の難しさというのはあるようにおもいます。ところで、夕霧さんにお伺いしたいのですが「A列車で行こう」シリーズでは、現実の鉄道会社をみて参考にするのですか?

 
ダイヤや実際の利用状況、配線など様々な点を取り入れています

ダイヤや実際の利用状況、配線など様々な点を取り入れています (撮影:夕霧もや・2017年)

 

夕霧:大いにありますね。旅行に行って来たらその行った先をモデルにして作りたくなります。逆に言うと妄想を見るために現実をきっちり見に行っているのかもしれません。現実を見ないと自分の中で納得いく妄想ができないのです。リアリティを持ったものを作るためにはリアルを見てこないといけないわけですよね、結局。

鳴海:なるほど。そこでお2人は共通していますよね。ゲームをするにも、リアリティを追求するために実際のまちを見る。そして要素を取り入れる。私はゲームをあまりしないので、まちに対するお2人の見方がとてもユニークで刺激になりました。本日は長時間にわたり、どうもありがとうございました!

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お知らせ

今回のインタビューで載せきれなかったまちづくりゲームの魅力を「matinote plus」(一部有料)でお届けします。今回お話いただいたお2人のユニークなプレイスタイルや失敗談などを数回にわたって配信予定ですので、お楽しみに!(詳細はTwitterで別途お知らせします!)

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鳴海 行人
matinote仕掛人・ライター・マネージャー(編集長) 90年生まれのまち探訪家。 地域を俯瞰的に見つつ、歴史を掘り下げて現在の姿への系譜を探りながら、まちを観察をしています。地誌・地方都市・総合交通体系・ロードサイド・観光・空間デザインなど様々な視点を駆使し、まちを読み解くことがひとつの楽しみです。