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新年度!今日からできる「ちょっと快適通勤」のすすめ

いよいよ2017年度がはじまります。そして、合わせて新しい生活が始まる方々も多いかと思います。
 今回は新生活応援として、まちと馴染みの深い、通勤・通学に役立つ話をお届けします。いつものmatinoteとは少しテイストの違うお話ですが、ぜひ快適な暮らしに役立ててください。

4月には電車が混む!?

 4月と言えば新年度、新生活の時期です。そして、新生活にしばしば待ち受けているのが、通勤電車の激しい「混雑」です。

 長年利用している方は実感しているかもしれませんが、「4月は電車が混雑して、遅延する」と言われます。それは、新しくその路線を使い始めた方が、慣れるまでは時間がかかるためです。また、4月のうちは大学生が朝早くに登校することが多いですが、ゴールデンウィーク明け頃には段々と登校時間が遅くなっていきます。

 様々な事情が重なり、4月は電車が混雑すると感じるようです。

通勤列車の混雑はいつから?

 人々を悩ませる通勤電車、それは大正時代にはもうあったと言います。
 例えば1919年に発表された添田知道氏の歌「東京節」では
 ”東京の名物満員電車 いつまで待っても乗れやしねえ 乗るにや喧嘩腰いのちがけ…”

 と歌われています。この「満員電車」とは当時走っていた東京市電のことです。
 この頃は市内の路面電車の混雑が見られましたが、その後は関東大震災の影響もあり、郊外からくる鉄道の「ラッシュアワー」がみられるようになっていきました。

 現在に通じるような激しい「ラッシュアワー」が見られるようになったのは戦後のことです。急速な経済成長で農村から東京を中心とした大都市への人口流入が始まります。
 急激な人口流入へ対応しきれず、1970年ごろまでの混雑が最も激しかったといわれます。なんと、「電車のガラスが割れる」とされる混雑率300%に達している路線もありました。
 現在最も混雑するとされる東京メトロ東西線の混雑率は199%で、当時の状況がいかに凄まじかったか分かります。

でも、東西線の混雑もいまだにかなりのものです。(撮影・夕霧もや 2016年)

 


 このような「痛勤」とも言える状況に対応するため、鉄道会社や国が中心となり、新路線の建設や既存路線の複々線化、車両の増結といった多くの策が講じられてきました。
 長年にわたる取り組みの成果により、年々混雑率は低下しています。現在でも鉄道が混雑していると感じる方が大多数かとは思いますが、これでもかつてより「マシ」な状況とは言えるのです。

最近の鉄道各社における取り組み

 電車は相変わらず混雑しているのだから、もっと車両や路線を増やしてほしい!と思う人も多いと思います。しかしながら、鉄道会社も現状以上のサービスを提供するのは難しい状況にあります。

 まず、路線や車両を増やす前提として、乗客が今後も増えるという見込みの元で投資が行われてきました。しかし、近い将来に東京でも人口減少が見込まれる今、投資をして設備を増強するための前提が崩れてしまったのです。

 大規模な投資ができない状況下で、近年鉄道各社が力を入れているのが「ピークシフト」と「着席保証列車」の2策です。

 「ピークシフト」策とは、朝の最も混み合う時間を避けての通勤通学を促す方法です。朝の混雑は、会社の出勤時間と合致する1時間、概ね都心に7時45分~8時45分に到着する時間帯が特に激しくなります。「混雑率」は、この考えに基づいて「ピーク1時間」での測定が行われてきました。
 一方で、この前後の時間帯には比較的余裕があることから、乗客に乗る時間の「シフト」を促しています。具体的な例としては、東急田園都市線や東京メトロ東西線で実施されている、ポイントが貯まる「早起きキャンペーン」が代表的です。

 また、ダイヤを工夫している会社もあります。京王線では、早朝時間帯に特急・準特急といった速達列車を多く走らせることで、早い時間帯の利便性向上によるシフトを促しています。朝の京王線は「電車が詰まり、遅い」ことで有名なだけに、それを避けられる効果は大きく、利用者からも支持を集めています。鉄道会社としても線路容量に余裕がある時間帯の増発なので、大きな投資は必要がありません。

最も混雑する「早朝特急」は、ピーク時間帯の列車に匹敵する混雑です (撮影:夕霧もや 2016年)

 

  「着席保証列車」は、数百円程度の追加料金を払うことによって、混雑を避けて確実に座席に座れる列車で、いわゆる「ライナー」と呼ばれるものです。
 古くは特急列車を車庫へ回送する際に列車を有効活用しようと設定が始まりました。近年は多くの私鉄で導入されています。
 この春より運転開始した、西武池袋線と東京メトロ有楽町線/副都心線、東急東横線を直通運転する「S-train」は記憶に新しい方もいらっしゃるかもしれません。

 「着席保証列車」は鉄道会社にもシステムの導入コストがかかりますが、座席指定席料という運賃とは別の追加収入が入ってくることでカバーができます。

 「ピークシフト」と「着席保証列車」。これらを利用できる方は、ぜひ利用してみるといいかと思います。とはいえ、恩恵に預かれる方はけして多くないでしょう。そこで、手軽に、ひょっとしたら使えるかもしれない混雑回避策をお伝えしたいと思います。

今日からできる混雑回避方法

 最初に試してみたいのが、同じ時間帯の中でも「空いている列車を選ぶ」ことです。混む時間帯でも、急行や普通といった種別、あるいは他の路線との接続といった要素によってかなり混雑度が変わります。

 空いている列車を知る方法として有用なのが「NAVITIME」アプリです。このアプリでは、シミュレーションに基づいて1本1本の電車の混雑情報が提供されています。試しに自分が乗りたい時間帯の列車を見比べてみてはいかがでしょうか。
 また、こちらのアプリでは先日より「混雑回避ルート」の検索にも対応しました。普通に乗り換え案内を使う感覚で「空いたルート」の検索も可能です。

「混雑回避ルート」検索のイメージ図 Ⓒ株式会社ナビタイムジャパン 様(画像使用許諾済)

「混雑回避ルート」検索のイメージ図 Ⓒ株式会社ナビタイムジャパン 様(画像使用許諾済)

 

 JR山手線を利用している方は、「JR東日本アプリ」を用いることで、リアルタイムの混雑状況を知ることができます。

 このほか、近年は各鉄道会社が駅貼りのポスターやWebサイトにて混雑状況を公開する動きが広まっています。例えば、京急電鉄はWebページやアプリで、各駅から発車する列車の混雑状況を出しています。

 では、調べても空いている列車が見つからなかった場合、どうしたらいいでしょうか。

 そこで有効なのが空いている「車両」を探すことです。同じ列車の中でも、車両ごとの混雑度には大きな差があることがあります。多くの場合は都心側の駅で階段に近くて便利な車両が混雑するので、まずはそうした車両を避けるのがセオリーです。

 こうした車両ごとの混雑差がもっとも顕著に見られるのがJR埼京線で、大宮方面の車両だけが極めて激しく混み合います。実際に調査したところ、平均すると一番混む1号車が「扉が閉まらない程度のぎゅうぎゅう詰め」、反対側の9号車は「立って新聞が読める程度」で、かなり大きな差となりました。

埼京線は車両ごとの混雑差が著しいため、利用者を誘導するポスターも貼られている (撮影:夕霧もや 2016年)

埼京線は車両ごとの混雑差が著しいため、利用者を誘導するポスターも貼られている (撮影:夕霧もや 2016年)

 

 近年では上の写真のように車両ごとの混雑をポスターなどが掲示されていることがあります。無い場合は自分で様々な車両を試してみると、穴場が見つかるかもしれません。 

究極的な混雑回避策は…

 ここまで様々な混雑回避策をお伝えしてきましたが、空いている列車も車両もない! という路線もまだまだあります。もし可能であるなら、そうした路線の沿線を避けるのが一番でしょう。

 完全な私見ですが、東京都心のエリアごとに通勤が楽な沿線例を何個かピックアップしてみました。 

大手町駅・東京駅より西側……東京メトロ東西線(中野側)・高田馬場乗り換え西武新宿線、都営三田線(西高島平側)

日本橋駅・東京駅より東側……都営浅草線~京成線(直通)

新宿駅……JR中央線各駅停車(三鷹側)、都営新宿線

渋谷駅……京王井の頭線(比較的空いている吉祥寺駅側の車両をおススメします)

将来引っ越しをされることがあれば、ぜひ参考にしてみてください。

それでは、どうかよい通勤ライフを!

参考資料

原田勝正 2000「通勤・通学の歴史的文化的考察」『国際交通安全学会誌』vol.25,No.3
『都市交通年報』 運輸政策研究機構 各号
株式会社ナビタイムジャパン・KDDI株式会社「世界初!「電車混雑回避ルート」を提供開始」http://corporate.navitime.co.jp/topics/pr/201703/16_4083.html
京急電鉄 「京急電鉄からのお知らせ 混雑時間帯を避けたオフピーク通勤・通学にご協力をお願いいたします」http://www.keikyu.co.jp/report/2016/20170301IN_16064YM.html

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てぃえくす (旧 夕霧もや)

ラッシュアワーの秩序ある混沌を観察する人。大きな都市の朝の風景はどこも滾ります。  旅で追いかけるのは「まち」の「一瞬」。通勤・通学で混み合う交通機関や、買い物客で賑わう商業施設。その「まち」でどのように機能しているのか観察するのが楽しいです。 あと、ご当地の甘いものに目がありません。名物も地元で愛されているものも、気になったら食べに行きます。