秦野ってどんなところ?ー湧水とたばこのまち・秦野:第1回

 神奈川県に盆地があるというと少し意外に思われるかもしれません。湘南に代表される海と大山や蛭ヶ岳に代表される丹沢の山々や箱根、その間に広がる平地や丘陵……神奈川県のイメージは概ねこんな感じでしょう。

 しかし、神奈川県には盆地になっている自治体が1つだけあります。それが神奈川県秦野市です。

 北は関東山地、南は渋沢丘陵に挟まれ、伏流水が生み出す名水の郷としてPRを行っています。2016年には環境省の名水百選にも選ばれました。

 そんな自然豊かな秦野市ですが、東京の外縁部にあたることもあり、近代になると大きな産業の転換や街の構造の変化がありました。今回は3回にわたってこの秦野市を特集し、東京外縁部のまちの変化と魅力に迫ってみたいと思います。

 

秦野市中心部を流れる水無川から上流方向を見ると、丹沢の山々が間近に見えます (写真:鳴海行人・2016年)

 

神奈川県の大きな自治体と秦野市の位置関係です (OpenStreetMapを元に作成) © OpenStreetMap contributors

 

 

秦野市の構造

 秦野市は東京・新宿から小田急小田原線の急行を利用すると1時間ほどの位置にあります。小田急小田原線は10分に1本ほど運行され、利便性はかなり高いです。車では国道246号線や東名高速道路でアクセスでき、太平洋ベルトへもつながりがあります。

 市内は神奈川中央交通のバスが人口の多いエリアをカバーしており、平塚方面へのバス本数が多くなっています。

 そして地域は大きく3つに別れ、秦野駅北側の曾屋(そや)地区を中心とした秦野地区、西側の渋沢駅を中心とした西地区、東側の東海大学前駅を中心とした大根(おおね)地区となっています。

 

各地区と丹沢の山および小田急の駅の相関関係  (OpenStreetMapを元に作成) © OpenStreetMap contributors

 

 3つの地区のうち大根地区だけは関東平野に属し、秦野市内よりも伊勢原市や厚木市とのつながりが強い地域となっています。秦野地区と西地区は秦野盆地に属し、大根地区と秦野地区の間が境になります。地図で言えば、弘法山の南側で、小田急線に乗っているとトンネルを抜けるのでわかりやすいかと思います。

 

秦野市は北側に丹沢山系、南側に渋沢丘陵を配する盆地となっています。写真は弘法山から撮影した、渋沢丘陵の下を走る小田急ロマンスカーです (写真:鳴海行人・2016年)

 

 産業は工業がメインです。曾屋地区から西北西に向けて広がり、物流に有利な立地を活かしています。工業化が進む高度経済成長期前はタバコの生産で栄え、秦野のタバコは高級品種として人気がありました。

 工業化後は東京・横浜・厚木のベッドタウン機能も加わり、市内の工業地域に通勤する人々とベッドタウンとして住んでいる人が入り交じる面白い地域となっています。

 商業的には渋沢駅前、曾屋地区に商業集積があり、大型商業施設としてイオン秦野店(ジョイフルタウン秦野)がJT秦野工場の跡地にあります。また、国道246号線沿いにロードサイドの商業集積が見られます。東の大根地区は特殊で、東海大学駅前に学生街が広がっています。

 

自然豊かなまち・秦野

 シティプロモーションとして全面に押し出されているのは自然環境の豊かさです。先に述べたとおり、名水百選、そしておいしい名水部門1位に選ばれたことで、さらに勢いづいています。市内のコンビニでは「おいしい秦野の水」というミネラルウォーターも販売されています。

 この水の源は北にそびえる丹沢の山々です。丹沢を代表する山、大山は伊勢原を玄関口としていますが、蛭ヶ岳に代表される山々は市内西部の渋沢駅が玄関口です。春から秋にかけて、休みの日の朝になると、多くのハイカーで賑わいます。

 秦野地区の東にある弘法山も市内では有名な存在です。低山で、軽いハイキングには向いています。山頂からは東に東京・横浜、西には秦野市内が一望でき、まちの様子を手に取るように眺めることができます。

 

弘法山から秦野市中心街を望む (写真:鳴海行人・2016年)

 

 その他にも秦野駅前を流れる水無川や表丹沢の麓にある秦野戸川公園、震生湖は散歩やハイキングにうってつけの場所になっています。

 ここまで秦野市の概略を紹介してきました。20万人弱という人口ながら、様々な特色を持ったユニークなまちであることがうかがえたかと思います。次回は秦野地区にフォーカスし、江戸期から現代にいたるまでのまちの移り変わりと、その時代らしい商業模様について掘り下げてみたいと思います。

[参考文献]

秦野市史編さん委員会(1985)『秦野市史 第4巻』秦野市.
秦野市史編さん委員会(1986)『秦野市史 第5巻』秦野市.
秦野市史編さん委員会(1986)『秦野市史 第6巻』秦野市.
「図説・秦野の歴史」編集委員会(1996)『図説 秦野の歴史 1995』 秦野市(管理部文書課市史編さん担当).
井上卓三(1978)『秦野たばこ史』(財)専売弘済会文化事業部.
秦野市HP:http://www.city.hadano.kanagawa.jp/www/index.html(2017/3/26確認)

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鳴海 行人
matinote仕掛人・ライター・マネージャー(編集長) 90年生まれのまち探訪家。 地域を俯瞰的に見つつ、歴史を掘り下げて現在の姿への系譜を探りながら、まちを観察をしています。地誌・地方都市・総合交通体系・ロードサイド・観光・空間デザインなど様々な視点を駆使し、まちを読み解くことがひとつの楽しみです。