今や私たちの生活に無くてはならない存在となったコンビニ。2018年3月末現在、全国のコンビニの店舗数は55,404店にもなります(一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会調べ)。また、日本最大のコンビニチェーン「セブン-イレブン」の店舗数は、2018年3月末に2万店の大台を越え20,286店になりました。
普段のちょっとした買い物だけでなく、公共料金の支払いや通販で購入した商品の受け取りの場にもなり、身近にあって当たり前の存在になっているコンビニ。街の散策や旅行先でも、ふらっと立ち寄り買い物をすることが当たり前だと思います。
しかし、そんなコンビニも少し視点を切り替えるとユニークな世界が広がっています。今回は、コンビニの「見た目」に注目し、少し違う見た目の店を紹介します。
これもコンビニ?「おめかし」したコンビニたち
そもそも、私たちがコンビニがコンビニであることをどうやって把握しているのでしょうか。
その答えのようなものが2017年3月、特許庁から示されました。セブン-イレブンの看板や商品に使われる「白・オレンジ・緑・赤」の組み合わせが商標として認められたのです。
特許庁の説明によると、商標とは、事業者が自社の取り扱う商品やサービスを他社のものと区別するために使用するマーク(例:企業のマークや商品・サービスのネーミング)で、私たちは商品を購入したりサービスを利用したりするときに、この「商標」を目印として選んでいるとのことです。
このことから、私たちはおそらく各コンビニの看板(ファサード)の色を目印として、コンビニであることと、ブランド(セブン-イレブン・ローソン・ファミリーマート etc……)を把握していると考えられます。
しかし、普段見慣れた看板と少し違う店舗があります。
茶色と白色の「和風」な雰囲気の「観光地型」コンビニ
日本で有数な観光地・京都。その中でも「京都らしい」街並みを見ることができる、祇園の花見小路にユニークな見た目の店舗があります。「ローソン祇園花見小路店」です。
普通のローソンの看板で使用されている水色やピンク色のラインは使われず、ご覧の通り茶色と白色を主に使用した看板になっていることが分かります。
実は以前、京都でこの見た目で有名だったのは八坂神社前の「ローソン八坂神社前店」だったのですが、残念なことにこの店舗は地価高騰が理由ということで、2018年1月に閉店してしまいました。それでも、近くにはこのような見た目のコンビニが他チェーンも併せてたくさんあります。
続いて紹介するのは、群馬県にある有名な温泉地、草津温泉にある店舗です。草津温泉は湯畑を囲むように温泉や土産物店、温泉宿が立ち並んでおり、紹介する「セブン‐イレブン 群馬草津湯畑店」はその並びに店を構えています。
こちらの店舗も京都のローソンと同様に、普通のセブン-イレブンの看板で使われる「オレンジ・緑・赤」のカラーリングは使われず、茶色と白色がメインに使われており、屋根も傾斜のついた入母屋のようになっており、周囲の建物とマッチした雰囲気となっています。
2つのコンビニを紹介してきましたが、どちらも景観を守るための景観条例を理由にこのような外観となっていると考えられます(この2店が立地する地域の景観条例の詳細は参考資料に掲載しております)。
同じように景観条例が制定されている日本各地のいくつかの観光地では、この2店のように茶色と白色などの落ち着いた色を基調とした外装の店舗を見ることができます。そのため、私はこうした見た目のコンビニを「観光地型」と呼んでいます。
アーバンでスタイリッシュなデザインの「都市型」コンビニ
次に紹介するのが、「オシャレ」で「洗練された」デザインのコンビニです。一体どんな店舗なのか、百聞は一見に如かずということで早速紹介していきます。
1つ目に紹介するのが、東京・銀座にある店舗です。銀座には「オシャレ」なコンビニが複数立地していますが、中でも今回紹介する「セブン-イレブン銀座7丁目店」はその立地している場所も相まって、非常に「洗練された」お店に見えるのではないでしょうか。
どうでしょう、普通のセブン-イレブンの店舗との違いを分かって頂けたでしょうか。なんといっても、普通の店舗と違って幅の広い看板が使われていないことが最大の特徴だと思います。
続いては大阪にある店舗を紹介します。こちらは大阪の「キタ」(梅田)の繁華街の一角をなす茶屋町の近くに立地している「ローソン鶴野町店」です。
茶屋町から新御堂筋を挟んで反対に位置しているということもあり、茶屋町の「オシャレ」な雰囲気に溶け込むような店舗と言えるでしょう。
そして最後に、神戸にある店舗を紹介したいと思います。紹介するのは、神戸の2大中心地である三宮と元町の中間地点に立地する「ファミリーマート柳屋三宮神社前店」です。
この店舗の付近には大丸神戸店が立地し、商店街には有名ブランドの路面店が立ち並んでおり、その街の「オシャレ」な雰囲気に調和するような外装になっています。
駆け足で東京・大阪・神戸にある見た目が特徴的なコンビニを紹介してきました。いずれの店舗にも共通するのは、外装がシンプルになっているというところです。そして「都市」に立地しているということです。そのため私は便宜的にこのようなコンビニを「都市型」と呼んでいます。ちなみに「都市型」といっても大都市だけではなく、各地の地方都市でもこのような店舗を見ることができます。
ちなみに、一概には言えませんが、この「都市型」のコンビニの背景にも景観に関する規則が敷かれているところもあります(銀座は「銀座まちづくり協議会」による「銀座デザインルール」が、神戸は「神戸市都市景観条例」が背景に存在)。外装がシンプルになっている理由も、看板の表示面積を最小限にするという景観に配慮した結果といえるのかもしれません。
「目的地」としてコンビニを見てみると
今回は「外装」に注目して、普通とは少し変わったコンビニを数店舗紹介してきました。普段、何気なく立ち寄って飲食物や日用品、レジ横のコンビニフードなどを買うコンビニですが、ちょっと見方を変えてみて、出かける「目的地」として「見た目がちょっと変わったコンビニ」を巡ってみるのはいかがでしょうか。
私はここで紹介したような変わったコンビニを「オシャレコンビニ」と称してGoogleのマイマップでまとめています。もしちょっとでも興味を持たれた方がいらっしゃれば、こちらのオシャレコンビニ分布図を参考に、自分の住んでいる街やお気に入りの場所の変わったコンビニを探し出して、訪れてみるのも面白いかもしれません。そして「なぜここにこんな変わった店舗が?」と疑問に思ったら、その理由を調べることも、きっと面白いのではないでしょうか。
この記事をご覧になった方の毎日の生活の中や散歩、街歩き、そして観光での見方や楽しみ方が少しでも深まれば、私としては嬉しい限りです。
参考資料
京都新聞(2017)「八坂神社前の京風ローソン閉店へ 観光客増、地価高騰影響か」京都新聞,2017年12月10日 11:25配信, http://www.kyoto-np.co.jp/local/article/20171210000031 (2018年4月20日最終閲覧)
日本経済新聞(2017)「「色だけ商標」第1号、セブンやトンボ消しゴムに 特許庁が認める」日本経済新聞,2017年3月1日 16:39配信, https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS01H29_R00C17A3PP8000/
(2018年4月20日最終閲覧)
一般社団法人 日本フランチャイズチェーン協会 コンビニエンスストア統計データ 2018年3月度:
http://www.jfa-fc.or.jp/folder/1/img/20180420102625.pdf(2018年4月20日最終閲覧)
※調査対象は(株)セイコーマート、(株)セブン-イレブン・ジャパン、(株)ファミリーマート、(株)ポプラ、ミニストップ(株)、山崎製パン(株)デイリーヤマザキ事業統括本部、(株)ローソン
セブンイレブン 企業情報 国内外店舗数:http://www.sej.co.jp/company/tenpo.html (2018年4月20日最終閲覧)
特許庁 商標制度の概要:https://www.jpo.go.jp/seido/s_shouhyou/chizai08.htm (2018年4月23日最終閲覧)
景観条例 参考資料
京都市 祇園町南歴史的景観保全修景地区歴史的景観保全修景計画:http://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000016167.html(2018年4月21日最終閲覧)
銀座街づくり会議 銀座デザイン協議会:
http://www.ginza-machidukuri.jp/design/outline.html(2018年4月21日最終閲覧)
草津町 湯畑地区 景観街づくり協定:
http://www.town.kusatsu.gunma.jp/www/contents/1493081593792/files/syu_yubatake.pdf
(2018年4月21日最終閲覧)
神戸市 三宮中央通り景観形成市民協定: http://www.city.kobe.lg.jp/information/project/urban/scene/sannomiyatyuoukyoutei.pdf
(2018年4月21日最終閲覧)
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