石灰と信仰に彩られた父性的なまち・秩父

 埼玉県西部にある秩父地方は人口700万人を擁する同県内の中でも山あいの長閑なエリアです。その秩父地方の中心を担う街、秩父は石灰で栄えた街で、近年は観光需要も高まっています。本記事ではそんな秩父のいまを紹介していきたいと思います。

秩父って?

 秩父地方は山に囲まれたエリアです。人口は約10万人で、うち6割以上は中心となる秩父市内に居住しています。秩父の由来は諸説ありますが、知知夫国造(ちちぶのくにみやつこ)がいたことなどから、かなり古い地名ではあるようです。

秩父の歴史と産業

 歴史としては、和同開珎が当地で発見されたことが特筆できるでしょう。ほかには平氏系の秩父氏を輩出し、その後は近代まで特に大きな動きはなく推移します。
 近代になると、養蚕と農業が主な産業でしたが、養蚕が苦しくなると秩父事件が勃発し、全国最大規模の民衆蜂起の現場となりました。秩父事件とそれをめぐる民俗誌は現在も研究が進められています。
 その後は石灰が採れることから石灰の採掘が大きな産業となり、特に武甲山は石灰の露天掘りを行ったことから独特なシルエットとなっており、そのシンボル性から住民の心のより所となっているようです。

 
武甲山

矢尾百貨店屋上から南西方向を臨む。秩父の住宅街と武甲山(撮影:鳴海行人・2015年)

 

  石灰輸送があったために鉄道の開通は早く、明治末期には秩父鉄道が秩父まで開業しています。その後も1960年代に西武秩父線が開業、秩父と池袋が1本で結ばれることとなり、県都浦和(さいたま)よりも池袋の方が近くなっています。
 西武秩父線も石灰輸送のために造られた路線でしたが、観光振興の側面もあり、特急「レッドアロー」が走るようになります。その後は石灰の輸送方法なども変わったことで、西武の貨物輸送は終了しています。

 
秩父駅構内

秩父鉄道秩父駅構内。貨物用の線路の多さから貨物輸送が盛んなことがわかります(撮影:鳴海行人・2015年)

 

  1990年代に入ると観光振興により力を入れはじめ、秩父鉄道でSL「パレオエクスプレス」が走り始めます。また、2000年代になると、秩父地方を舞台とした「あの花の名前を僕たちはまだ知らない」で注目されるようになります。その後西武鉄道の再編に伴って秩父の観光振興に力を入れるようになったことで、信仰の地としての側面からパワースポットとしても近年急速に注目を集めている地域となりました。

秩父市街について

 秩父地方は全体的に神仏関係のスポットが多い所で、宝登山や秩父札所、三峰神社、秩父神社と巡り始めるとかなりのボリュームがあります。
 その秩父地方の中心となっている秩父市街は、秩父神社の南側に広がるエリアで、古くは「大宮郷」と称していました。やはり神社を中心とした町だったということが分かります。
 現在もその名残は秩父神社の例大祭秩父夜祭にみることができます。祭りが行われる12/2・3の両日は市内で山車が引き回され、花火が上がるなど大きなイベントとなっており、西武鉄道・秩父鉄道共に多くの臨時列車を出すほど多くの観光客が訪れています。

 
秩父市街図。ベース地図はOpen Street Map

秩父市街図 (OpenStreetMapを元に作成) © OpenStreetMap contributors

 

 さて、秩父の中心街ですが、商店街は秩父神社の前から面的に広がっています。様々な店があった形跡が見て取れます。往時はかなり賑わったのでしょうが、全体的な印象としては活気がなくなってきているようです。

 
秩父中心街

中心市街地を秩父神社方面へ臨む(撮影:鳴海行人・2015年)

 

 ただ、活性化の糸口が無いわけでもなく、レトロな建築物が所々にあります。これらを上手く活用出来れば、神社の門前町ということもあり、西武秩父駅からの流れを生み出して活性化出来そうではあります。

 
有形登録物(秩父市街)

有形文化財となっている建築物。中心市街地内にいくつかある(撮影:鳴海行人・2015年)

 

 大型商業施設としては「矢尾百貨店」、「ウニクス秩父があり、特に「矢尾百貨店」は地域に根ざした大型商業施設として地元の支持を集めているようです。大体地域の商業は中心商店街で18時~19時台に、遅い店舗でも20時~21時に閉店します。地域の主なスーパーベルク」(埼玉県内で主に展開)の一部店舗はかなり遅く、24時まで営業を行っています。

 
矢尾百貨店

市民のデパート、矢尾百貨店。駐車場は時間によっては激しく混雑します(撮影:鳴海行人・2015年)

まとめ

 全体的な印象としてちょっと厳しく、ピンとした緊張感があり、父性的な町なのではないかと感じます。言うなれば、武骨な親父のようなイメージです。
 地域振興に関しては、三峰神社や宝登山などもあることから、これらとの回遊コースを上手く作りながら秩父中心街の求心力も高め、リノベーション・場作りをしていくとよいかもしれません。
 また、東京近郊で池袋まで1時間半程度、夏の夜は涼しいということもあって、手軽な避暑地としても売り出していける可能性もあるように思います。まだまだポテンシャルを秘めた町の変化に期待したいところです。

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鳴海 行人
matinote仕掛人・ライター・マネージャー(編集長) 90年生まれのまち探訪家。 地域を俯瞰的に見つつ、歴史を掘り下げて現在の姿への系譜を探りながら、まちを観察をしています。地誌・地方都市・総合交通体系・ロードサイド・観光・空間デザインなど様々な視点を駆使し、まちを読み解くことがひとつの楽しみです。